海辺のカラス

四国高松で暮らすことになった僕の家出少年的日誌と釣行記

旅立ちの日!海辺のカフカと黒猫ルドルフが照らす西への道

いよいよ僕史上最後となるであろう家出―横浜の実家を出て四国へと旅立つ日がやってきた。

引っ越し業者に頼む経済的余裕などない。普通自動車パンパンに荷物を積み込んで、800km自走で西へ向かう。

問題は時間である。

現地で不動産屋から鍵を受け渡されるのが15時。早朝出ればまにあう気もするが、急いた気持ちで旅路を行くのは野暮である。ここは前日から余裕をもって行くのがオトナというものだ。


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3月2×日、21時。住み慣れた街に別れを告げる。やはり家出は夜に限る。荷物の準備にギリギリまでかかってたわけじゃないんだよ、ほんとだよ計算通りなんだから。

■23:00 富士川SA

最初の休憩地点は、東名高速富士川サービスエリア。

そう、『海辺のカフカ』でヒッチハイク中のナカタさんが降り立ち、ヤンキーに絡まれたのち空から大量のヒルを降らせたあの場所だ。

少しだけ先の未来が見えるナカタさんが、雨も降っていないのに傘をさすところから始まるこのシーン。ファンとして、やらずにはいられないでしょう・・・!


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・・・イタい。どうしよう、やってることサブカル拗らせたアニオタとか韓ドラの聖地巡礼行ってるおばちゃんと変わらねぇ。四十数年前、ヴェルサイユのプチトリアノンで「オスカル!!」と叫んだというお袋のご友人トワネットと一緒・・・いや、それには遠く及ばないな。ちなみにヒルは降らなかったもちろん。

■00:30 浜名湖SA

予定通り3時間半で浜名湖に到着。我ながら安全運転だな、うん。

浜名湖SAといえば!ルドルフシリーズ2作目『ルドルフともだちひとりだち』のなかで、ヒッチハイクしながら岐阜を目指し、空腹でフラフラになった黒猫ルドルフがウナギを恵んでもらうところ!

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児童書だからといってナメてもらっちゃ困りますわ。この岐阜へ帰るくだり、めちゃくちゃ切なくていい話だから。何度も泣いてるから。ウナギ食うたび涙がこぼれそうになるから。

“ひとりだち”を目指す僕としてはどうしても浜名湖SAでウナギを食べたかったのだけど、もちろんこの時刻ではやっていない。

とりあえずいい地点までは来れたので、翌朝6時まで車で眠ることに。これが誤算だったと知るのはすこし後のことだったー

■03:30 ???

呼吸が苦しい。息が…できない。首と背中の一部に痛みを感じる。寒い…。

はっ!と目が覚めると、運転席で変な体勢で座った状態の自分がいた。外は・・・まだ暗い。スマホをみると3時半。3時半?なぜこんなに早く起きた??

混乱した頭で状況を整理する・・・そうか。

これまで多少は旅や車中泊を経験してきたであろう僕にとってあるまじき誤算。“引っ越しの荷物を後部座席パンパンに詰めるとシートを倒せない問題”が発生していたのだ。

ただでさえ窮屈な車中泊なのに、リクライニング不能これはもう想像を超えたしんどさである。さらに車外の気温5℃。どうした温暖化。春になったはずだろ。体が冷え切ってもう眠れない。目的地までまだ430㎞もあるぞ。

しかし、そんな僕を神・・・いや、浜名湖SAは見捨てなかった。なんと24時間営業のラーメン屋があるではないかよ!


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午前4時の豚骨醤油。罪深いぜ・・・。

■07:00 大津SA


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そのまま出発して出てきたため、7時には滋賀県大津に到着。琵琶湖が、広いぜ。そして、眠いぜ。

たしかこのSA宿泊所なかったっけ?と思ったが、多賀SAの間違いだった。通り過ぎたなおい。あと軽く朝食とってから気付いたが、ここは“まずいコーヒーといちごジャムのサンドイッチ”を食べるべきでしたねカフカファンなら。さくらさんのような年上のおねいさんとの同行ももちろんないので、あきらめて車でちょっとだけ眠り、西を目指す。

■14:00 高松着


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まにあった。

途中いくつかSA寄って仮眠をとりつつ、明石海峡大橋~淡路島~鳴門大橋のルートから四国入り。ナカタさんのルートと同じ、大きな橋を渡ってきた。

結局、出発から17時間。時間かかりすぎ!これ実家でバッチリ寝て早朝出ればもっと快適だったぞ・・・。

ともかく、こうして僕の香川での生活が始まった。ここが僕にとってルドルフで言う“東京という竜宮城”のようになるのか、それともカフカの直面する“ひどいひどい砂嵐”になるのか。今後もこの2作は僕の道を照らしてくれると信じている。