僕たちは何を自粛すべきなのか/新型コロナウイルスvs釣り人
新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、全国に出された緊急事態宣言。
釣りをはじめとしたアウトドアにも自粛ムードが訪れている。登山に関する有名人同士のケンカが象徴的だけれど、実際「野外活動って自粛する意義ある?」と思っている釣り行きたいだけの僕みたいなバカな人も多いはずだ。今回は、そのへんについて自分のなかの天使と悪魔を戦わせてみたい。
■天使の言い分
まずは、自粛すべき派としての自分の考え。
*釣り場で不特定多数の人が出会うことで感染リスクが高まるよ
*仲間同士でワイワイ釣り行くなんてもってのほか!
*釣りの行き帰りにどうしたってコンビニ寄ったり外食したりするでしょ
*ていうか釣具屋寄るよね?
*他県に釣り行ってませんよね?拡げますよウイルス?
*家にいるより怪我のリスクが大きいことで医療機関への負荷が高まる
*とにかく不要不急の外出自粛だっつってんだろ!みんな我慢してんだよ!
■悪魔の言い分
次に釣りなんて全然OKでしょ、という自分の考え。
*いや、ひとりで山奥の渓流や磯、広大なサーフや干潟、真夜中の港湾や河口へ行って逆に誰と接触しろって言うんだよ
*普段から先行者いたら回避してます~
*職場からの帰りに海へ寄ってそのまま帰宅。普段の生活と比べて特に感染リスク高い部分ありますか?
*釣り場って密閉空間からいちばん遠い存在なんですがね
*ひとり暮らしの人間がひとりでどこにいようとリスクは変わらない。外でも中でも
*医療機関への負荷?釣り場でする怪我は外科行きだろ?(そもそも怪我しちゃイケマセンが)
*僕ルアーマンなんすよね。釣具屋寄らずに完結するんですわ、その日の釣り
*最後のやつ、理論放棄してますよね?
■天使の反論
*いやいやいや休日になったらどいつもこいつも堤防に密集してんじゃん!
*キミがルアーマンかそうじゃないか、ひとり暮らしかどうかなんて、周りからはわからないんだよ
*医療機関への負荷は病院内だけじゃない。大きな事故起こしてレスキュー呼んだらそれだけ接触リスクは高まるんだよ
*うるせーうるせー!バーカバーカバーカ
■緊急事態宣言の解釈
さて、議論が白熱して天使がやや劣勢?に見えてきたところで、前提として香川県が県民に呼びかけている緊急事態宣言の内容を確認しておこう。
知事から県民の皆様へのお願い
香川県におきましては感染者が急増しています。新型コロナウイルス感染症の拡大を抑えるためには一人一人の行動が大切です。自分だけなら大丈夫という意識を変え、御家族や大切な人を守るため、次のことを強くお願い申し上げます。
1.人との接触をできるだけ減らしてください。
2.不要不急の外出を控えてください。
(生活上必要な物の買い出しや、やむを得ない仕事等以外の外出を控えてください。感染拡大地域との不要不急の往来を控えてください。)3.やむを得ない外出の場合も、人混みを避けるとともに、人との間隔をなるべく空け、3密(密閉・密集・密接)は絶対に避けてください。
4.体調が悪い時は、勇気をもって仕事を休んでください。
5.こまめな手洗いや咳エチケットを守るとともに、バランスの良い栄養、十分な睡眠時間、適度な運動をとるようにしてください。
引用 香川県HPより
このなかで特に釣り人に関係するのは、1・2・3かな。
特に問題なのが2。
字面だけ追うと、完全にOUT。どう転んだって、僕らの釣りが“生活上必要な買い出し”や“やむを得ない仕事等”に該当するわけないよな。1ヶ月1万円生活じゃないんだから。
ただ、やっぱりルールというのはその意義を理解してはじめて意味のあるものになると思うのだ。信号が赤だから渡っちゃいけないんじゃない、危ないからだ、ってラーメンズも言ってる。
この場合、目的は外出しないことじゃなく、ウイルスを蔓延させないことだ。あとはこれを各々がどう捉え行動するかにかかってくるわけだが・・・。
■実際に行ってみた
というわけで、釣りに行きた過ぎて実情を確かめるべく、県内の某漁港へ行ってみた。
土曜日、夕飯食ってから21時出撃。
おい、人いるじゃねーか!堤防先端から、電気ウキ、電気ウキ、ファミリー、ルアーマン、電気ウキ・・・お前らええかげんにせぇよ!自粛やぞ!←
しかし、コロナ対策の呼びかけ効果があってかどうか、混雑しているとまでは言えない。というか絶妙な距離感で成立している。そもそも釣り場の数や広さが関東圏とは比べものにならないから、ぎゅうぎゅうに密集して阿鼻叫喚、ということはまるでない。間に割って入るくらいなら、別の場所行こうかなーというくらい。その距離、約15m間隔。絶妙。
今回のミッションは、いかに人との接触を避けて釣りを成立させるかというものでもあるため、話しかけて状況確認するのもナシ!人のいる場所を避けて、ひとり誰も見向きもしないポイントへ入ってみると―
うん、釣れるね。
その後、人のいなくなる深夜まで待ってから、よりよさげな場所へ―
はい、成立しますわ。
人のいないポイントや時間帯+足場の安全な港湾部+店に寄らない。これ、アリなんじゃね?
■僕らが本当に自粛すべきこと
じゃあ、釣りは自粛しなくてよし!明日からみんなバンバン行って好きなように釣れ!という結論になるかというと、うーん・・・さすがにちがうよな。
フィジカルな面でいうと
*釣り場では他人と接触しないように。ポイントや時間帯を選びましょう
*先行者がいたらおとなしくその場所はあきらめましょう
*ほかの食事や飲み会、遊びと同じように、友達と行くのはいまは控えましょう(オンライン釣行会とかちょっと楽しそう)
*途中、コンビニや外食をできるだけ控えましょう
*遠出せず、この機会に近所の釣り場を見直しましょう
*以上が達成できなそうなら、その日の釣りはやめましょう
というあたりを押さえてコンパクトな釣りを心掛ければ、僕は釣りに行ってもそれほど問題はないと考える。
むしろ大事なのは、その後のこと。
魚が釣れると、どうしても人に自慢したくなる。古来より釣り人とは自己顕示欲のカタマリ。そういう生き物なのだ。ましてSNSのある現代は、右手と左手の距離でホラ話吹かしてた時代とはわけがちがう。発信は楽しい。それを見るのも楽しい。
しかし、他人の釣果を見るとどうしても行きたくなる。それは羨ましいという単純な問題ではなく、その時期、そのポイントに魚が回遊している、パターンがはじまっているというシグナルでもあるからだ。リアルタイムな情報は、釣り人にとって必要不可欠なのである。
釣りに行く人の数が増えれば増えるほど、他人と接触せずに釣りをすることが困難になる。また、残念ながら全釣り人がウイルス対策に意識が高いわけではない。結果として、自身の発信が感染リスク拡大の確率を上げないとも限らない。ほんの0.0数%だとしても。
あと、住んでいる場所によってはカンタンに釣りに行けなかったり、行きたい気持ちをグッと押さえて外出自粛努力をしている人だっている。そういう人たちに釣果を見せびらかすのは、感染リスクどうこうでなく、僕の趣味とするところではない。ルールの問題でなく、人としての問題だ。もうすでにメバルの写真貼っちゃってる時点で破ってるわけだが。
海辺のカフカについての話でも述べたが、要するにこれも想像力の問題である。
釣りに行くも行かないも自由。ただ、現段階ではひっそりと自分の内にしまっておくのも“粋”というものだ。昔から釣り人は“粋”を大事にしてきた遊び人なのだから。